皆さん、こんにちは。千葉県市原市で、主にプラントや発電所などの保温保冷工事・板金工事を手がけている株式会社誉工業です。
以前の記事(https://www.homare-kougyou.jp/blog/column/155074)では、工場・プラントにおける保温・保冷工事の重要性について解説しました。この保温・保冷工事は、多くの場合「ラッキング」とセットで行われます。ラッキングも保温・保冷工事と同様、工場の機能を維持するための大切な工事です。ここではラッキングの役割・目的や材料の種類、施工の手順や注意点について解説します。
■ラッキングとは?
ラッキングとは「配管板金工事」のことで、配管に保温・保冷工事を施した上から、さらに薄い金属を巻く工事をいいます。ラッキング用の金属には、主にアルミやステンレス、銅板などが使われます。工場内では各種配管や空調ダクト、タンク、ボイラーなど、一般住宅でも水道管や給湯管などに施される工事です。
保温・保冷工事に使われる保温・保冷剤としては、グラスウールやロックウール、ウレタンフォームなどがあります。これらは断熱性や耐熱性には優れていますが、衝撃や紫外線にはあまり強くありません。また、保温材そのものが劣化し脱落することもあるでしょう。
ラッキングは、このようなトラブルから配管と保温材を保護する役割を果たしています。また、保温・保冷材の効果のさらなる向上や、美観の向上といった目的もあります。
■ラッキングの目的
ラッキングは、さまざまな効果を期待して施工されます。ラッキングの主な目的を見ていきましょう。
・配管や保温・保冷材の保護
最も重要な効果は配管の保護です。配管はある程度の強度を備えていますが、強い衝撃に耐えられるわけではありません。何かがぶつかると、傷ついたり破損したりする可能性があります。
加えて、屋外であれば風雨や紫外線などによるダメージを受け、劣化が進みます。保温・保冷材も、断熱や耐熱を目的としたものであって、さまざまなダメージから配管を守ってくれるわけではありません。何も対策をせずにいると、保温・保冷材自体が劣化していきます。
このようなダメージから配管と保温・保冷材を保護するためにも、ラッキングが必要なのです。耐火性に優れた素材でラッキングをすれば、火災から配管を守ることもできます。さらに、劣化した保温・保冷材が脱落し、製品に混ざってしまうようなトラブルも防ぐことが可能です。
・保温・保冷
ラッキングは保温・保冷材ごと配管を包み込むので、保温効果や保冷効果をさらに高めることができます。つまり、エネルギーロスの防止(省エネ化)によるコストダウンや、配管の結露・凍結の防止、火傷の防止、設備の機能補助などが期待できるのです。
もちろん、これらの効果をメインで発揮するのは、あくまでも保温・保冷材です。そのため、保温・保冷工事をしっかりと行った上でラッキングを施す必要があります。
・美観の向上
むき出しの配管はもちろん、保温・保冷材が巻かれた状態の配管は、見た目があまりよくないことが少なくありません。壁の中や天井裏など、普段見えない場所であればそれでもいいかもしれませんが、見える場所(特に屋外)を通っている配管だと少々問題です。そのようなケースでも、適切なラッキングを施せば、美観を向上させることができます。
・防音
配管によっては、物体が流れる際に大きな音がする場合があります。騒音が周辺の迷惑になったり、作業を妨げたりすることもあるでしょう。そのような場合はラッキングによって配管を覆うと、音が漏れるのを防ぐことができます。
■ラッキングカバーの種類
配管はまっすぐとは限らず、曲がりくねっていたりバルブが付いていたりすることがあります。そのため、どのような配管にも対応できるよう、ラッキングに使用するラッキングカバーにもさまざまな形状が用意されています。
たとえば、まっすぐな直管部に使われるのは「ジャケット」、曲がっている部分に使われるのは「エルボーカバー」です。弁体がある部分では、弁体を覆う「バルブカバー」を使用します。
また、配管部材の端を別の部材に接続するフランジ(つば)がある場所では、その形状に合わせた「フランジカバー」が必要です。柔軟性が高くねじれや振動に強いフレキシブルホースには、「フレキカバー」を使います。
さらに、ラッキングカバーの材質も重要なポイントです。よく使われる材質としては、カラー鉄板、ガルバニウム鋼板、ステンレス鋼板などがあります。カラー鉄板とガルバニウム鋼板の価格はほぼ同等ですが、ステンレス鋼板はそれらの約3倍と高めです。
しかし、ステンレス鋼板は耐食性に優れ、見た目も美しいというメリットがあります。そのため、雨風や温度変化の影響を常に受け、外観も気にする必要がある屋外配管のラッキングでは、ステンレス鋼板がおすすめです。このように、美しく頑丈なラッキングを施すためには、ラッキングカバーの形状や材質をよく考えて選択する必要があります。
■ラッキングの施工手順
機能性と美しさを兼ね備えたラッキングを施すためには、正しい手順で施工する必要があります。ラッキング工事の基本的な施工手順を見ていきましょう。
① けがき
まずはラッキング材のキャップ部分の表面に、基準となる線や穴を描く「けがき」作業を行います。使用する道具はコンパスや金切バサミなどです。取り付け先の配管の直径を測定した上で、そのサイズに合わせてけがきを行いますが、少し大きめにすると作業しやすくなります。
② 切り取り
けがきで付けた印に従い、金切バサミを使ってラッキング材を切り取り、ドーナツ状にします。この穴に配管を通します。
③キャップを配管に取り付ける
切り取ったキャップをひねるようにして、切り欠き部分から配管に取り付けます。狭い場所ではキャップに切り欠きを2つ入れ、キャップの面を割るようにして取り付けることもあります。
④ ラッキングカバーで覆う
キャップを取り付けたら、次は胴体部分の長さを合わせて切り取り、配管にかぶせて固定します。
⑤ キャップを差し込む
胴体部分のラッキングカバーにキャップを差し込んで完成です。
■ラッキングは定期的なメンテナンスが必要です!
ラッキングは、施工した後にも注意すべき点があります。それは、定期的なメンテナンスが必要だということです。
ラッキングに使用される材料は主に金属であり、風雨や紫外線などの影響で劣化していきます。比較的サビにくいステンレスでも、劣化を完全に防ぐことはできません。特に屋外の配管は、紫外線や風雨、温度変化などの影響を強く受けるため、ラッキングの劣化も速いスピードで進みます。
そして、ラッキングの腐食・劣化・破損を放置すると、内部にある保温・保冷材や配管にまでダメージが及ぶおそれがあります。こうなると、保温・保冷材や配管本体の修繕工事が必要になり、大きなコストがかかってしまうでしょう。被害が深刻な時は、工場の操業自体にも支障をきたしかねません。
このようなトラブルを防ぐためにも、ラッキングの定期点検や修繕工事を行う必要があるのです。ラッキング材が劣化しているだけなら、その部分を交換するだけで済むので、修繕費用を抑えることができます。工場を安定稼働させるためにも、ラッキングのメンテナンスは必ず行いましょう。
■まとめ
ラッキングは配管・保温材の保護や防音、美観維持など、重要な役割を果たしています。状況によっては不要なケースもありますが、多くの場合は保温・保冷工事とセットでの施工が必要です。環境に合わせた材料の選択や定期メンテナンスなど、注意すべき点はいろいろありますから、経験豊富な専門業者に相談して適切なラッキング工事を行いましょう。
誉工業では、保温・保冷工事や板金工事などを手掛けています。さまざまな物件に対応しており、特に発電所やプラントの施工が得意で、年間200件以上の豊富な実績があります。
ベテランスタッフが多数在籍し、高品質な施工を提供できるのに加え、若手スタッフの機動力を活かして緊急のご依頼にも対応できるのが強みです。物件や施工箇所、用途に合わせて最適な工事を行いますので、まずはお気軽にご相談ください。