皆さんこんにちは。千葉県市原市を拠点に、プラントや発電所などの保温保冷工事・板金工事を手掛けている株式会社誉工業です。
工場・プラント・発電所といった施設では、配管やダクト、タンクなどの設備に保温工事を施す必要があります。この保温工事において重要になるのが、使用する保温材の選択です。求められる保温性能や周辺環境は場所ごとに異なるため、適切な保温材を選ばなければなりません。今回は、保温工事で用いられる主な保温材と、それぞれの特徴をご紹介します。
■保温工事ってなに?
保温工事とは、配管やダクトなどの設備に「保温材」を取り付け、設備内の温度を一定に保つ工事です。工場やプラントの配管やダクトには、さまざまな気体や液体が流れており、多くの場合は要求される温度を保つ必要があります。しかし、何の対策もしていない状態で物体を通すと、熱が逃げて冷えたり逆に温まったりして、一定の温度を保つことができません。
これでは熱エネルギーの損失が生じ、製品の品質低下や結露といったトラブルが発生するおそれがあります。そのような事態を防ぐために、保温材で設備を覆い、熱の伝導を遮断する必要があるのです。詳しくは以下の記事をご覧ください。
https://www.homare-kougyou.jp/blog/column/155074
■保温工事で適切な保温材を選ぶべき理由
保温工事において重要なウェイトを占めているのが、保温材の選択です。一口に保温材といってもその種類はさまざまで、特徴もそれぞれ異なります。用途や施工場所ごとに適した保温材を選ばなければ、十分な保温効果が得られなかったり、そもそも使用できなかったりする可能性があります。
たとえば、900℃の高温の物体が流れる配管に、300℃までの保温効果しかない保温材を取り付けても、規定の温度を保つことはできません。それどころか、熱によって周囲の温度が上昇し、機械の誤作動や熱中症、火傷、発火などのリスクが生まれます。同様に、低温の物体が流れる配管の保冷が不足していると、結露や凍結により機械を故障させるおそれがあります。
また、保温材には水分を吸収しやすいものがあり、このタイプは湿気が生じやすい場所には適していません。もちろんコストも無視できない問題で、必要以上に高性能の保温材を使うと、費用の無駄が生じてしまうでしょう。このように保温材は、各製品の特徴をよく理解した上で、施工場所に適したものを選ばなければならないのです。
■保温材の種類
適切な保温材を選ぶためには、どのような保温材があるのかを知っておく必要があります。主な保温材の種類を見ていきましょう。
・ケイ酸カルシウム
ケイ酸カルシウムは、珪藻土と石灰を結合・乾燥させた保温材です。最も代表的な保温材で、熱伝導率は数ある保温材の中でもトップクラスの低さです。耐熱温度も高く、最大900℃までの保温に使用可能な製品もあります(耐火被覆に使われるものなど)。
さらに、難燃性で火災に強く、重量が軽く、コストも比較的安価であるなどメリットが多いことから、幅広く使用されています。ただし、吸水性が高いため、結露が発生する低温の場所には適していません。
・パーライト
パーライトは真珠岩を微粒子レベルにまで粉砕し、高温で焼成し発砲させた上で、水ガラス系の結合剤を混ぜて作る保温材です。性質はケイ酸カルシウムとよく似ており、幅広い用途で使用されています。熱伝導率・比重・価格などはケイ酸カルシウムと同程度で難燃性でもありますが、強度はやや劣ります。
また、吸湿性が高い点も同じですが、撥水加工されたものは湿気の多い場所でも使用可能です。さらに、成形せず粉状のまま使用する場合もあります。LNG(液化天然ガス)や液体窒素、液体酸素といった、極低温の液体を貯蔵するタンクの断熱用充填剤が主な用途です。
・ロックウール
ロックウール(岩綿)は、安山岩などの鉱物を高温で溶かし、圧縮空気を吹き付けて繊維状に加工した保温材です。材料が岩なので熱や火に強く、優秀な保温材として工場やプラントで広く使われています。熱伝導率や価格はケイ酸カルシウムやパーライトと同程度です。
また、ロックウールは高温になっても収縮・変形しにくいという特徴があります。ケイ酸カルシウムやパーライトは、高温になると収縮して隙間が生じ、保温・断熱効果が薄れてしまいますが、ロックウールならその心配はいりません。
さらに、保温される側の配管やダクトは高温で熱膨張するため、保温材は膨張分を吸収するように施工する必要がありますが、ロックウールは特別な処理をしなくても膨張を吸収できます。そのため、配管側の膨張を考慮せずに施工できるのが大きなメリットです。
ただし、変形しにくいがゆえに、隙間なく施工しないと保温効率が落ちるという欠点があります。継ぎ目の隙間は見えにくいので、十分に密着しているかどうかを確認しながら施工しなければなりません。また、ロックウールの繊維が皮膚に刺さるとかぶれることがあるため、施工時には手袋をつけるなどの対策が必要です。
・グラスウール
グラスウールは、高温で溶かしたガラスを繊維状に加工した保温材です。ロックウールとよく似ていますが、より繊維が細いため、皮膚がかぶれる心配は小さくなっています。
グラスウールの特徴は、種類がとても多いことです。多種多様な製品が用意されているため、目的に応じて最適な製品を選ぶことができます。非常に軽量かつ熱伝導率も小さいのがメリットで、使い勝手がよく優れた保温性能を発揮します。価格も他の保温材と比較して安価です。
その反面、耐熱温度が300℃程度とやや低く、これ以上の高温になる場所には使用できません。製品によっては、極低温の場所に使える場合もあります。
・フォームグラス
フォームグラスは多泡質ガラスの保温材です。ガラスの微粉末にカーボンを混ぜ、発泡・焼成して作ります。「泡ガラス」の通称で知られており、その名の通り細胞状の独立気泡で構成され、気泡内には炭酸ガスを主成分とするガスが封入されています。このガスが熱の出入りを遮断してくれるのです。
また、不燃材料なので耐火性が高く、素材がガラスのため耐水性や耐薬品性にも優れています。使用温度範囲も広く、極低温から450℃程度まで、幅広い温度で使用することが可能です。ただし、熱伝導率は他の保温材に比べて大きく、厚めに施工しなければならないという弱点もあります。
・硬質ポリウレタンフォーム
硬質ポリウレタンフォームは、ウレタン樹脂を発泡させて作る合成樹脂系の保温材です。最大の特徴は熱伝導率が非常に小さいことで、薄くても十分な保温効果を発揮します。
ただし、施工する際に化学反応を必要とするため、施工者の技術力や施工条件によって品質が左右されやすく、施工が難しいというデメリットがあります。また、極低温でも使用可能な製品はありますが、基本的に高温部には使用できません。さらに、燃焼すると有毒ガスが発生し、価格も高価であることから、工場やプラントにおいてはあまり使用されない材料です。
・ポリスチレンフォーム
ポリスチレンフォームは、ポリスチレンを発泡させて作る合成樹脂系の保温材で、いわゆる発泡スチロールのことです。熱伝導率が比較的小さいのに加えて加工しやすく、水を吸収しにくく、低温でも使用できて価格も安いというメリットから、かつては工場やプラントの保温材としてよく使われていました
しかし、耐熱性が低いので高温部に使用できず、石油系溶剤に触れると溶解してしまうというデメリットがあります。そのため最近では、プラントの保温材としてはほとんど使用されません。
・フェノールフォーム
フェノールフォームは、フェノール樹脂を加熱・発泡させた合成樹脂製の保温材です。同じ合成樹脂系の硬質ポリウレタンフォームやポリスチレンフォームと比較して、最も難燃性が優れています。熱伝導率も硬質ポリスチレンフォームに次いで低く、100℃~120℃程度のやや高温の場所や、極低温の場所でも使用可能です。
その性質により、LNGタンクや重油タンク、原油タンクなどの保温材として広く使用されています。欠点は価格が高いことです。
■まとめ
保温材の選択は、保温工事において大きな意味を持っています。適切な保温材を選んでこそ十分な保温性能が得られ、周辺環境にも耐えて長く機能を維持できるのです。そのため、保温工事を実施する時は、保温材の性能に詳しい業者に依頼する必要があります。経験豊富な専門業者に相談し、最適な保温材を選択して工事を行いましょう。
誉工業では、保温・保冷工事や板金工事などを手掛けています。さまざまな物件に対応しており、特に発電所やプラントの施工が得意で、年間200件以上の豊富な実績があります。
ベテランスタッフが多数在籍し、高品質な施工を提供できるのに加え、若手スタッフの機動力を活かして緊急のご依頼にも対応できるのが強みです。物件や施工箇所、用途に合わせて最適な工事を行いますので、まずはお気軽にご相談ください。